本プログラムは平成28年3月31日をもって終了いたしました

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基礎知識

基礎知識1 遺伝子変異とがん

あらゆる生物の体は細胞から成り立っています。ヒトの体も細胞からできています。細胞の核の中にはDNAがあり、遺伝情報を担っています。ヒトのDNAは30億塩基対もの長さで、その中には、タンパク質をつくるもとになる塩基配列(長さはいろいろですが、1,000~数千塩基程度)が数万個含まれています。その1つ1つを遺伝子と呼びます。遺伝子はmRNAに転写され、さらにそのmRNAが翻訳されてタンパク質がつくられます。生命活動は、細胞の中で様々な遺伝子が必要に応じて働く(遺伝子の情報をもとにタンパク質がつくられる)ことで営まれています。

遺伝子の塩基配列には、変異が起こることがあります。変異とは、塩基配列のどこかの塩基が本来とは違うものになったり、欠けたりすることです。ヒトは誰でも生まれつき、いくつかの遺伝子変異をもっています。また、細胞が増殖するときにDNAが複製されますが、そのときのエラーで変異が生じることもあります。さらに、紫外線、放射線、変異を誘発する化学物質などによっても変異が引き起こされます。遺伝子に変異が起こると、遺伝子をもとにつくられるタンパク質が本来とは異なる性質をもつようになり、病気の原因となることがあります。なかでも、がんの発生・転移・再発には、遺伝子の変異が深く関わっています。

正常な細胞は、必要に応じて増殖し、十分な量になれば増殖をやめますが、がん細胞は増殖し続けます。この違いは、おもに2通りの遺伝子の変異によって生じます。1つは、細胞の増殖を促進する「がん遺伝子」(用語集参照)です。この種の遺伝子に変異が起こると、増殖を促進し続ける働きをもつようになることがあります。もう1つは、細胞の増殖を抑える「がん抑制遺伝子」(用語集参照)です。この種の遺伝子に変異が起こると、増殖を止める働きが失われることがあります。このほかにも、様々な遺伝子の変異ががん細胞の異常な増殖に関係しています。

正常な細胞で、こうした遺伝子変異が生じると、細胞の増殖が促進されます。増殖が速くなると、ほかの遺伝子の変異も起こりやすくなり、さらに増殖が速まります。こうして、正常な細胞ががん細胞に変化するのです。

遺伝子変異と細胞のがん化のイメージ

さらに、正常細胞ががん細胞に変化した後も、遺伝子の変異は続きます。これにより、がん細胞の性質が変化し、周囲の組織に浸潤することもあります。また、それまで効いていた抗がん剤が効かなくなることがあります。さらに、治療後に残ったがん細胞の遺伝子が変異して再発したり、遺伝子の変異により、原発巣からほかの組織へと転移する能力をもったがん細胞ができたりすることもあります。

このように、正常細胞で起こった遺伝子の変異が細胞をがん化させ、がん化した細胞の中ではさらに遺伝子変異が蓄積されて、がんを悪性化させていくのです。