本プログラムは平成28年3月31日をもって終了いたしました

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基礎知識

基礎知識4 がん微小環境とがん幹細胞

がんの組織はがん細胞だけからできているわけではなく、線維芽細胞をはじめ、炎症細胞、免疫担当細胞などの正常細胞も共存しています。さらに、血管、リンパ管、結合組織なども存在します。これらからなる微小環境の中で、がん細胞は増殖しています。また、がんが転移するときには、原発巣を離れた細胞が自分に適した微小環境の場所にたどり着き、そこで転移巣を形成するという考えが古くからあります。

がん細胞が放出する物質により、血管新生が促されることは早くから知られ、その物質の働きを抑える分子標的薬(血管新生阻害剤)はすでに使われています。しかし、それだけでなく、がん細胞と正常細胞の間には、様々な物質を介した相互作用があり、これによりがん細胞が自分にとって生きやすい微小環境をつくっていることがわかってきました。

そこで、本プログラムでは、このような「がん微小環境」で働く分子を標的として、がんが生き延びられないようにする薬を開発しようとしています。新たなしくみによる血管新生阻害剤の研究開発も行っています。

一方、がん組織をつくっているがん細胞も均一ではないことが、近年知られるようになりました。がんの中に、がん細胞を生み出すもとになる細胞集団があることが、次第にわかってきたのです。正常組織にも幹細胞はあり、正常組織に必要な様々な細胞を生み出しています。また、様々な細胞をつくるもとになる胚性幹細胞(ES細胞、用語集参照)や人工多能性幹細胞(iPS細胞、用語集参照)が体外で樹立され、再生医療への応用が期待されています。こうした幹細胞にならって、がんを生み出す細胞は、「がん幹細胞」と呼ばれるようになりました。

がん幹細胞は自分の複製をつくるだけでなく、様々ながん細胞に分化する能力をもっています。また、がんにとって大事な細胞ですから、周囲からのストレスに耐えるしくみが発達しており、抗がん剤や放射線治療に対しても抵抗性を示します。抗がん剤でがん組織が小さくなっても、再発することがあるのは、がん幹細胞が残っているからだと考えられています。がんの転移も、がん幹細胞がほかの場所に生着することで起こると考えられています。

そこで、本プログラムでは、がん幹細胞をたたく薬の開発に取り組んでいます。具体的には、幹細胞としての性質を維持するのに必要なタンパク質や、ストレスに耐える際に重要な働きをしている分子を標的としています。

がん幹細胞が生き延びるには、微小環境が非常に重要であることもわかってきています。がん幹細胞が生息する微小環境は特に「がん幹細胞ニッチ」と呼ばれ、がん幹細胞にとって最適な微小環境となっています。このため、このニッチを破壊することで、がん幹細胞をたたくという方法も研究されています。