本プログラムは平成28年3月31日をもって終了いたしました

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基礎知識

基礎知識5 テロメアとがん

ヒトは誰しも老化します。老化とは、加齢とともに個体の機能が低下し、その結果死ぬ確率が増加する現象ですが、その大きな要因として、細胞の老化があります。

若い細胞は活発に増殖しますが、老化するに従って増殖速度が低下します。これには、染色体の末端にある「テロメア」という部分のDNAが関係しています。細胞が増殖する際には染色体のDNAが複製されますが、複製機構の制約から、DNAの全長が複製されるわけではなく、末端は複製されません。そのための「切りしろ」として、あらかじめ用意されているのがテロメアDNAです。テロメアDNAは短い塩基配列の単純な繰り返しで、遺伝情報はもっていません。

細胞が1回分裂するたびに、テロメアDNAは少しずつ短くなっていきます。そして、テロメアDNAがある程度まで短くなると、細胞の増殖は止まってしまいます。テロメアは細胞分裂の回数を数えるカウンターのような働きをしていて、その回数がある程度以上になると(つまり、ある程度の時間がたつと)、細胞は分裂しなくなるのです。これが細胞老化です。

細胞の分裂回数が増えれば、DNAの複製エラーなどによる遺伝子変異(基礎知識1「遺伝子変異とがん」参照)が起こる確率も高くなります。体にとって、遺伝子変異をもった細胞がどんどん増えてしまうのは不利ですから、テロメアのカウンターは、それを防ぐ働きをしていると考えることもできます。

しかし、がん細胞はどんどん増殖します。テロメアのカウンターは機能していないのでしょうか? 実は、たいていのがん細胞では、短くなったテロメアDNAを伸長修復するテロメラーゼという酵素が働いており、がん細胞が分裂してテロメアが短くなると、すぐにテロメラーゼがもとの長さに戻します。このため、がん細胞は無限に増殖できるのです。

正常細胞ではテロメラーゼは働いていないので、テロメラーゼを阻害する薬はがん細胞だけをたたく抗がん剤になると期待され、本プログラムでも研究・開発を進めています。また、がん細胞の種類によっては、テロメラーゼを使わない機構で増殖を維持している場合もあるので、そうした機構を標的とする薬の研究・開発も進めています。

細胞分裂によるテロメアの短縮