本プログラムは平成28年3月31日をもって終了いたしました

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基礎知識

基礎知識10 がんと免疫

免疫とは、体外から侵入した病原体などの異物を排除する体の働きです。免疫機構には、樹状細胞、Tリンパ球、Bリンパ球など様々な免疫細胞が関わっており、これらが次々に働いて、異物を認識し、攻撃して殺すのです。一部のがんでは、免疫によりがん細胞が排除されることが古くから知られていました。近年では、そのしくみがかなりわかってきています。

細菌やウイルスなどの病原体は、それぞれ特有の抗原(おもにタンパク質)をもっています。抗原は、免疫機構が病原体を異物だと認識する際のカギとなるもので、病原体の種類によってそれぞれ異なります。同様に、がん細胞にも特有の抗原があることが知られるようになりました。樹状細胞ががん細胞に出会うと、がん細胞を取り込み、がん細胞がもっていた抗原を自分の表面に提示します。これを「抗原提示」といいます。提示された抗原をTリンパ球が認識すると、Tリンパ球は活性化され、増殖して数も増えます。そして、この抗原をもつ細胞を見つけると、細胞を殺す物質を放出して、殺してしまうのです。

そこで、がんに対する免疫機構を強化してがんを治療しようという考えが生まれました。それが、免疫療法です。免疫療法として、いろいろな方法が試みられています。

その1つは、がんワクチンです。例えば、インフルエンザでは、ウイルスを弱毒化したワクチンをあらかじめ接種して免疫機構の力を高めておき、感染を予防します。これと同様に、がん抗原をワクチンとして接種し、がん細胞に対する攻撃力を高めようというものです。

もう1つは、免疫増強物質を用いる方法です。サイトカイン(用語集参照)や、細菌やキノコから抽出された物質の中には、免疫機構を強める作用をもつものがあります。こうした物質を患者さんに投与します。

また、患者さんから取り出した免疫細胞を体外で培養して、体内に戻す方法もあります。例えば、樹状細胞をがん細胞の抗原とともに培養し、抗原提示をさせてから体内に戻す方法が研究されています。

一方、がん細胞は、免疫から身を守るために、免疫の働きを弱める働きをする分子をつくって対抗します。こうした分子の働きを抑えることでがんを治療しようという戦略もあります。例えば、がん細胞は、Tリンパ球が表面にもっているPD-1という受容体に働きかける分子(PD-1リガンド)をつくり、Tリンパ球が自分を攻撃するのを抑えています。そこで、PD-1とPD-1リガンドの結合を妨げる抗体医薬が開発され、メラノーマの治療薬として製造承認を受けました。

ただし、免疫機構は非常に複雑な上に、がん細胞の抗原はがんの種類や患者さんによって異なります。このため、免疫療法は期待通りの効果を示さない場合もあります。そこで、本プログラムでは、免疫療法の有効性を予測するための免疫バイオマーカーの開発や、複数の免疫療法を組み合わせる複合免疫療法の研究に取り組んでいます。